19. 脊髄損傷の症状

1.脊髄ショック

急激な横断性損傷で生じる。脊髄ショックから回復するまでの期間は24時間~4-5ヶ月と幅がある。

ショックの状態:損傷高位より下の腱反射が消失し、筋緊張が低下する。

2. 運動機能障害

損傷高位に応じて運動麻痺が出現する。

C1~C3高位 :横隔膜のマヒで、自発呼吸不可。人工呼吸器が必要。

C4高位     :自発呼吸は可能。上肢帯以下の完全麻痺。

C5 高位          :三角筋、上腕二頭筋が機能し、机上動作は自助具で一部可能となる。

車いすの平地走行可能

C6高位    :push up動作が可能となり、水平移乗動作可能。自助具でADL自立。

C7高位    :push up動作がより強くなり、垂直方向移乗動作が可能。ADL自立。

C8高位    :全手指の伸展可能。

T1~T7高位   :上肢機能の障害はない。

T8~T12高位:腹筋が機能。歩行装具で、訓練として歩行可能なるも実用性はない。

L1~L3高位 :腸腰筋等が機能。長下肢装具と両松葉で歩行可なるも実用性なし。

L4~L5高位 :短下肢装具と両杖で実用歩行が可能。

3.知覚障害

完全損傷の場合、表在知覚の触覚、痛覚、温冷覚および深部知覚の振動覚、識別性知覚、位置覚などが失われる。

4.自律神経障害

自律神経は、交感神経と副交感神経からなる。

交感神経は、

脊髄T1からL2までの側角に核を有し、そこから各髄節の前角を経由し、脊髄から出て交感神経幹を経て各臓器に接続し調整する。

副交感神経は2系統あり、

眼球、心臓、肺、腸管系を支配する脳神経のⅢ動眼神経、Ⅶ顔面神経(中間神経)、Ⅸ舌咽神経およびⅩ迷走神経と、膀胱・直腸等の調整をしている仙髄S2,3,4からの骨盤内蔵神経からなる。

交感神経と副交感神経の核は同じところから出ていないことに注意が必要。これは、損傷した部位によっては症状が交感神経優位に出たり副交感神経優位に出たりするということです。

例えば、頸髄損傷やT5,6以上の脊髄損傷の場合、T5以下の腹腔、内臓および腸管の交感神経の支配が広範囲に絶たれ、起立性低血圧や体温調節障害等の症状が出現すると同時に、副交感神経優位な支配を受け除脈、低血圧等の症状が出現する。

5.膀胱直腸障害

膀胱と直腸は自律神経の支配を強く受けているため、損傷高位によって排尿・排便機能に大きく影響する。

6.性機能障害

性機能も同様に、交感神経の刺激で射精、副交感神経の刺激で勃起が起こる。

7.合併症(20. 脊髄損傷の合併症に記載)

運動障害、知覚障害、自律神経障害に起因する合併症が主であるが、心理的な問題もある。